彼等のテスト前夜

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限りなく適当に靴を脱ぎ散らかして、どちゃどちゃとリビングに入る二人。
エンヴィーは鞄をどさっと置いて、ソファーになだれ込んだ。

「うわ久しぶりにきたかも。ぜんっぜん変わんないけど」
「…なーんか意外にさっぱりしてんだよナー、思春期男子二人暮らしのくせニ」「弟君しっかりしてるからね。おチビさんは置いといて」

リビングのテーブルには、おそらくエドワードのものであろう教科書やらノートがたくさん広げてある。やりかけのルーズリーフなんかもあるが、少なくともエンヴィーに理解できる日はこなそうだ。
だが、それを除けば家具類もすっきりとしていてまとまっている。本が積まれていたりもして、インテリ大学生といった部屋だ。
あんなでも、エドワードは全国区でトップクラスの成績保持者だという事を思い出して、エンヴィーはげーっと舌を出した。

「てか何してんのさリン」
「部屋見ようかなっテ。エロ本の一冊や二冊…」
「お、いいね分かってんじゃーん」
「あれ二つ机にベッド…あ、アルのカ。どっちだと思ウ?」
「あ、こっちでしょ」

リビング横の部屋に集まった二人。アルフォンスには悪い気もするが、まあ彼の方には手を出さないとして。
エンヴィーの指差した先にはエドワードがいつもきている赤パーカーが椅子にかけてあった。
机の上は意外に片付いている。置かれている本は、少なくともエンヴィーの知っている高校生が読むものではなかった。

「やっぱ定番ベッド下ぁ?」
「うわおかしいこいツ、辞書とかでてきタ」
「うっそ。信じらんない頭おかしいんじゃないのおチビさん」
「あれダ。馬鹿と天才は紙一重」
「ほーう散々言ってくれんじゃねえか」

びくっとリンは背筋を伸ばした。最後に聞こえた声は、さっきまでここにはいなかった筈の。
汗ダラダラで振り返れば、拾いあげた辞書と買い物を手に笑顔のエドワードが。

「この辞書と、冷食の箱入りレジ袋。殴られんならどっちがいい?」
「…二択かナ?」

返事の代わりに、辞書の角がリンの頭に直撃した。

「ねえつまんない、何で一個もないのさ?男子高校生のくせに」
「エンヴィーてめえな「あ、ごっめん忘れてた!そうだよねエロ本なんていらないよねーウィンリィちゃんいるもんねーぶふぁっ!」

レジ袋が宙を舞ったと思ったら。エンヴィーの変な声と、ベッドに倒れこむその姿があった。

「ったくよお何で部屋入ってんだよ!おらさっさと出ろ!」
「だって入るなとは言われてないもーん」
「うぜっ…!と、とりあえずそこ、引き出しに日本史教科書あるから。リビングで広げて待ってろ」
「え?何で?」
「明日からテストおおおお!」
「エド、腹減ったんだけどサ。冷蔵庫あさってもいイ?」
「菓子パン買ってきたのあるから袋からとれ!…つか漫画読み初めてんじゃねえよリン!」

わちゃわちゃと両サイドからエドワードに声をかける二人。
もう一度辞書の角を二人の頭にお見舞いしてから、エドワードは二人を部屋から追い出した。


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