彼等のテスト前夜

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「うー」
「リン、それとって」
「あー」
「はいヨ。なーエド、ここの公式どーすんノ」
「うあー」
「「エンヴィーうるせええええ/エ!」」

時計の針は深夜2時を指している。
今まで真面目に勉強していた筈だ、多分。そんな中、絶え間なく響くエンヴィーの奇声に耐えられなくなった二人は、ついに揃って立ち上がった。
エンヴィーは、眠そうに欠伸をしてお菓子の箱をくわえている。中身はとっくに空っぽだ。

「飽きたーもー無理ーつか歴史なんてやる必要あんの?過ぎた過去に執着して馬鹿みたい」
「いやかっこいいこと言ってるっぽいけど。いいからさっさと問題とけよ…あ!落書きすんな馬鹿それ俺の教科書!」
「オ、エンヴィー絵うまいのナ」
「でっしょー」
「もうやだ…ふあーねみぃ…」

ずっとリンとエンヴィーにツッコミながら勉強をしていたエドワード。(色々な意味で)疲れもピークに達してきたのだろう。エドワードは大きく欠伸をして目を細めた。

「ほらね!?眠いよね!?んじゃ寝よう!」
「お前がそのプリント終わらせたらな…こらまだ寝るなリン!」
「俺もう赤点でイー「よくない!」

エドワードはばふっとソファーに飛込んだリンを一喝して、教科書を押し付ける。だがリンはそれでもめげずに体を丸め寝る体勢をとろうとしている。
しばらくぎゃあぎゃあと騒いでいた二人だが、ふとリンが動きを止めた。

「…何か静かじゃないカ?」
「ん?」

瞬間、二人は同じ事を思ったのだろう。同じタイミングで、勉強していたテーブルを振り返った。

「あーやっぱリ…」

そう、一番うるさかったエンヴィーの声が聞こえなくなったと思ったら。
彼は、器用にも普通に座ったままの体勢で椅子の上で眠りについていた。

「ったくこの野郎…蹴り落としてやろうか」
「まぁまァ。いいじゃん寝かせてあげれバ、こいつにしちゃ頑張ったっテ」
「…しゃーないか。さりげプリント丸バツだけやってるし。あー俺もねみー」
「しかし腹減って寝れなイ。なーエドなんかないノ?エドってバ…ア」

一瞬冷蔵庫をあさりにいったリンは、返事を返さないエドワードの方を振り向いて、そして微笑んだ。
エドワードは、エンヴィーに一応タオルをかけにいった所で力尽きたのか。エンヴィーの膝に腕を投げ出し床に座り込んで寝息をたてていたのだ。

「おやすミー」

リンはそんなエドワードの背にそっとパーカーをかけた。

「…まずいナ。マジでお腹ガ」

だがリンはしばらく、鳴り止まない腹の虫をどうにかしようと一人でコンビニにいったりしていた…らしい。





「ふあーあ、あー寝足りねー…テスト三時間目からだし、二度寝でも…おいリンお前は台所片せよ!」
「あ」
「エンヴィーどしタ」
「ミ●シィで日本史A同じやつが言ってんだけどさ。日本史Aテスト一時間目だから後五分で始まるって」
「「…うそだろ/ロ」」

数秒の沈黙。
そして、響いたエドワードの絶叫と、リンとエンヴィーの大爆笑の声。

テスト前夜の大戦争。これもまた、不思議な青春の1ページ。



fin.


【流音さま(@焦がれた。)作 2011年7月23日にいただきました。】

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