彼等のテスト前夜

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ずるずるとエンヴィーを引きずりながら、三人が辿りついたのは某ファミレス。
とりあえずリンは、逃げ出そうとしたエンヴィーを角の座席に放り込んだ。

「え、ちょ何さ、僕帰って見たいTVあんだけど」
「うるせえ。いいから勉強すんぞ!」
「…はぁ?ふざけてんの」
「ふざけてんのはお前だってノ」

なんて口ではいいながらも、リンの手にはメニュー。視線はしっかり新商品のパスタに向いている。
それを見つけたエドワードは一人呆れ顔だ。とりあえず、それぞれ席についた。

「腹が減っては戦は出来ぬって言うだロ?俺この新しいパスター」
「あ、じゃあ僕ドリンクバーとサラダ」
「俺はピザ…じゃねえよ!お前ら!リンまで!おら教科書くらいは出せよ!」

エドワードは言いながら、鞄を開く。リンはちゃっかり、ウエイターを呼び注文をすませていた。
対して、エンヴィーは椅子にふんぞり反っている。一先ず運ばれてきた水のストローを不機嫌そうにくわえて。エドワードとリンがテーブルに教科書を出すのを見ていた。

「ほらエンヴィーも教科書」
「無い」
「…学校カ?」
「ううん。捨てた」
「…はあああ!?馬鹿じゃねえのか!?え、ちょマジ…だあああ!喉乾いたリン水!」
「あいヨ」

エドワードは、リンに渡された水を一気に喉に流し込んだ。そして氷を噛み砕き、ダンとテーブルにコップを置く。
目の前の、一切悪びれる様子を見せないエンヴィーを一度ひっぱたいてからエドワードは腰を下ろした。

「しゃーねえ教科書は俺らで貸す…いや、待て、リンお前科目何とってる?」
「大体理系だナ。後フードデザイン」
「エンヴィーは?」
「サボりやすいのと必修だけかな。心理学系とかフランス語とか、実技系とか…」

そこでリンは、ア、とエドワードと目を見合わせた。そしてテーブルの上に視線をずらす。

「エンヴィー、テストありそうな科目ハ?」
「んー…多分必修の世界史と日本史のAと、地学と…古典くらい?」
「やばいなー…俺、理系ばっかだし、化学と生物なんだよな理科科目。世界史Bだし」
「俺は化学と物理。日本史のBだナ」
「古典も4と2で範囲違うらしいし。リンは古典とってねーし」
「おウ。エンヴィーハ…」
「…2だね、古典」

三人で顔を見合わせ、沈黙。
まさかの、一切被りなし。教えるも何も教科書は無いし、それ以前に自分達も知らないじゃないか。
一人馬鹿に明るいエンヴィーの、ドリンクバー行ってくるという声が響いた。
残された二人は、とりあえず教科書を捲りながら、溜め息を吐いた。

「…あ」

沈黙を破ったのは、エドワードだ。

「どしタ」
「俺さ、去年日本史Aとってたんだ。あんま記憶に無いんだけどさ必修で仕方なくだから…家に、教科書ある」
「…マジでカ」

リンは携帯を取り出した。時間は、もうすぐ7時。

「…俺は寮だかラ、平気だゾ。泊まりでモ」
「しかも、だ。今日アル体験学習でいないんだわ。アパート俺一人なんだ」
「「…行くか/カ?」」

沈黙を肯定と見なし、二人は全力で帰り支度を始めた。
ついでにリンはエンヴィーの鞄も担ぐ。そんな所にタイミングよく、エンヴィーは姿を表した。

「ねーねー見てこれ!すごくない!?コーラとメロンソーダとオレンジジュースと混ぜて「行くぞエンヴィー!」…え?」

再び、エンヴィーは二人に掴まれた。そしてエドワードに引きずられていく。リンはさりげなくレジにキャンセルを伝えにいったようだ。

「今度はどこ行くってんだよー」

半ば諦めの境地に達しながら、エンヴィーはおとなしく二人に引きずられて行った。


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