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バイバイ。






人間を愛したら終わり
愛されたいと思ったら終わり
人間になってしまうから






何にでもなれて何にもなれなかった
できそこない 堕天使 怪物 何と呼ばれたい?

いつまでも生きたけど どこまでもいけるわけじゃないと知っていた
望むモノは手に入らない 届かない地平がある
偽物の扉の前 完全を夢みて
偽の真理の声を聞き 人間に焦がれた 





完全って何かな 自問する
なれなかった何か

合わさる二匹の竜 輝く錬成陣

錬金術は よくわからない



不完全って何かな 人間?
だけどあいつら幸せそう

それも なれなかった




(妬んでいた)
(向こう側の存在)



(寝ても覚めても 忘れない)
(関わり続ける)
(終わらないくるしみ)


(それは)

(まるで恋のよう)







「バイバイ」




別れの言葉 最初で最後の

泣きながら言った さようなら


誰に?


(向こう側に)


(届けたくなった)
(初めて)


だって わかるよと言われてしまったから


まっすぐな瞳 哀れみとわずかでも 共感
垣根を越えて

まるで仲間のように

同胞のように

手を差し伸べられてしまった





だから言ったのさ バイバイ

嬉しくて 悔しい


だって そんなことをされたら 

(人と人の間 見守られ)

まるで 人間みたいだ




(それは夢の終わり)
(叶うとき)


(恋の成就)







そして 人間になったら もうお終い


限りある命 燃やし生きればこそ
激しく 儚く


(にんげんの ように)


最後には 


(バイバイ)









死んでしまうんだ












FIN




【あとがき】

えー…。
23巻(95話)のエンビが人をやたらとポエマーにする件について。

本誌95話発売の5月の段階でとりつかれたように絵やらポエムやら描いていたのが「95話関連企画」の三部作だったわけですが、それに対しこのポエムは遅まきながらコミックス発売記念という感じになります。ちょっと出遅れてますけど…υ
三部作の頃からすると少し静かな感じになってて、自分でもまた違う心境になってきたんだなという気はしますね…。
でも相変わらずとりつかれています。

漫画版のエンヴィーというキャラを私は「完全な存在の出来損ない」「神様もどき」「不完全な雌雄同体」「永遠の未完」という類のキーワードで捉えていました。(いや他のホムももちろん視界には入っているのですが…υ)

豊饒のはずが不毛。まるで神話の中の聖なる獣のような巨大で重たい身体。それもまとっているのは人間の魂で、きっと常にその声を身の内に聞き続けている(それは最早一つの人格といえるのだろうか?)。
なのに、その身の内にはぬぐえない矮小さの自覚と欠落を抱えているらしい。そのあたりのギャップがぼんやりと哀しくて、それゆえにとても心惹かれました。つまり、すっごい萌えでした。
こんなすごい生きものが、このあとどうなってしまうんだろうとドキドキしながら続きを待っていました。

そしたら驚いたことに、泣きながら、人間に理解されるなんて!と叫び、まるで人間のように死んでしまった。
それはホムンクルスとしての矜持を示したというようにも見えるし、そのような態度を示すこと自体が広い意味での「人間」(=自分の行動が持つ意味を理解しつつ、それをコントロールし、時にはその意志の力により生理的な肉体の要請を裏切りすらする)的な行いであったともいえる。

小さい身体に、人間という存在にまつわる様々な矛盾やら苦しみやら歓びやらをぎゅっと詰め込んで、はじけ飛ぶように消えていってしまった。そんな風に見えました。
あのシーンが私はとても好きです。本当に大好きなのでこれからもずっと忘れられないと思います。

だからこうして、しつこく思い出してしまうというわけです。

(2009/9/10)

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