僕のエンビたん


僕はエンビたんが大好きです

ここにくる前のことは覚えてません


僕はキメラなのだそうです
あるひ気がついたら檻の中にいてエンビたんがごはんをくれました
そしていろいろなことを教えてくれました
僕がむかし人間だったけど今はちがうこと
檻の中でくらさなきゃならなくて ここから一生出られないこと


エンビたんはたくさんのことを知っています
かわいくて 僕はすぐ大好きになってしまいました




仲間のキメラによれば エンビたんはえげつなくて意地悪なのだそうです
でも僕にはよくわかりません
何をいわれても大抵嬉しくなってしまうからです

エンビたんは会うたびに僕がぶさいくだといいます
のろまでグズで ちせいが足りないといいます
でも本当のことなので僕は気になりません
話ができるだけでニコニコしてしまいます







知り合って季節がひとつかわるころ エンビたんは僕をときどき檻の外に出してくれるようになりました
いつも時間が来ると せまい廊下をぬけて小さなへやにつれていかれます
そこで僕たちはときどき とても気持ちのいいことををするようになりました

エンビたんによると これはせっくすというおとなの遊びだそうです
特別中の特別 絶対二人だけの秘密にしなきゃだめだって
僕はそのための せいのどれいなので 特別生かしてやってるともいいました

意味はよく分からないけど 特別あつかいされるのがしあわせで
僕はもっと気持ちよくなりました






そういえば今日こんなことを言われました

二人でいつものようにくっついていたときのことです
エンビたんはじっと僕を見下ろしていました



ふふふ 人間のときはあんなにすました顔で人のこと見下した目で見てたくせに…
今はこんなになっちゃって

ざまぁないねぇ





僕は何のことかわからないのでニコニコします
本当にうれしいからです
すると エンビたんは唇をぺろりとなめて ますます楽しそうにこうつづけるのです



なに言われてるのかわかんないだろ
そうだよね バカになっちゃったんだもんねぇ
いい気味



エンビたんが僕を見てゆかいな気持ちになってくれるなら 僕も満足です



でもそれだけじゃありません


そういうときエンビたんは……


とてもとても エッチな顔をしてくれるのです… 





一通り僕をバカだとかぶさいくだとかなじると エンビたん決まって一度 満足そうなため息をつきます
そのあと静かになり 僕に身をすりよせてきます

安心したように目を閉じて
僕が背中をなでると とても気持ち良さそうにして


おいグズ 早くしろよ

そっとつぶやくのです





本当にかわいくてたまりません








でも ときどき ふと思うことがあります
エンビたんは少しかわいそうな人なのかな


どうしてかというと いつか誰かが僕のことをかわいそうなやつだといっていたからです

飼い主はペットに似ているし ペットは飼い主に似ていることが多い
だから かわいそうな僕を気に入ってくれるエンビたんも どこかすこし かわいそうなのかなと思ったのです



あと ずっとむかし 思い出せないくらいずっと前に 誰かがいっていた


(ひとにいじわるをしたり 見くだしたりするひとは)
(さみしいひとなのですよ)
(そういうひとは こころがいたいから) 
(ほかのひとのこころもいたくしたいんですよ)


そのせいかはわからないけど 

エンビたんをみていると たくさんすきだよといってあげたくなります
そのたびにエンビたんは バカにしたり うざいといったりするのですが
それでもどうしてもいいたくなるのです

もういいよ わかったからやめろよ そういってうんざりした顔をされるまで 
すきだよといって だきしめてあげたくなるのです

僕はぶさいくで頭のわるいキメラだから そうするしかできない











ある日のことです
僕がお昼寝からめざめると 少しだけいつもと違う顔をしたエンビたんが立っていました
両手にはいつものように食べ物を持っているのだけど よそゆきのコートを着ていました


エンビたんの持ってきてくれた食べ物をみてびっくりしました
冷えていましたが ちゃんとお皿にのっていて ふつうの人間が食べるようなおいしそうな料理だったのです 

「軍の残りもんだけど…食べられるだろ?人間だったんだから。」
 
僕はありがとうといって ばくばく食べました

とてもお腹がすいていたのです
だって この三日くらい誰も来てくれなかったんだもの
エンビたんによると 基地によそものがきてあばれたり囚人に逃げられたりして みんな大変だったのだそうです


せっくすしないときは いつもさっさと出て行ってしまうのに
その日 なぜかエンビたんは 僕がたべるのをじっとみていました
そしてたずねました

「うまいか?」

うん と僕はえがおで大きくうなずきました

するとエンビたんはこう言いました

「たくさん食べときな。こっちはしばらく旅に出るから。」


遠い北の地域にいくのだそうです

僕はちょっとびっくりして 不安になりました 
仲良くなってから エンビたんが遠くにいくのは初めてだったからです
だから早く帰ってきてねと言いました

すると エンビたんはちょっと笑いました 
またバカにされるかな そう思ったら違いました
僕のあたまにぽんと手をおいて言ったのです

「用事が済んだらすぐ帰ってきてやるよ。きっとすぐ片付くし。」

そしてなんと おでこにちゅーしてくれました

いい子にして 待ってるんだぞ そうつぶやいて

はじめてのことでした
生きててよかったと思いました


エンビたんにとって僕はかとうせいぶつだから
それまで せっくすはしても ちゅーをされる資格はなかったのです








エンビたんは今ごろ どうしてるんだろう
昼間のそらのした 雪の中をあるいているのかな
太陽の光を浴びたエンビたんはきっと とてもすてきでしょう
ほんとうに うっとりするくらいきれいで かわいいだろうな

僕はここから出られないので いつもひとりで想像して どきどきします

そしてどきどきしながら
今日もずっと 待ちつづけています


エンビたんの帰りを






END




【作者後記】

もとは俺×エンビたんなえっちな妄想だったつもりが、変な方向に行ってしまいました…。
エロ画像ならともかく、キメラ×エンビ小説を書いたのは今のところ世界で唯一だという自信がある。
ちなみにこのあと20巻展開です…。(2009/10/17)

+追記
なんでキメラが出てきてしまうかというと、多分こういう理由。
・これはあるお方も言っておられたことだが、エンビってどうにも悲恋・片恋体質というか、「幸せになれない系」の気配に満ちたやさぐれ感満点のキャラ…。もはや俺×エンヴィー路線しかハッピーエンドラブラブワールドが残っていないような気がしたのです。
・じつは外見コンプレックスが強いだけに、エンビは可愛かったりきれいだったりかっこよかったりする相手には「高嶺の花」感を持ってしまい、素直に近づけないのではないかという気がしている(例えばエド)。となると最早キメラしか(以下略


もちろん、他のヤヲイ妄想も激しく萌えてはいるのですが。